レジリエンス

困難から回復する力

レジリエンスは困難直面後に回復・適応していく力です。

 

うつ病等の精神疾患からの回復のためにも重要です。

 

動画:レジリエンス

もくじ

 
  1. (1)はじめに:レジリエンス
  2. (2)レジリエンスとは
  3. (3)精神疾患とレジリエンス
  4. (4)レジリエンスの改善法
  5. (5)まとめ
  6.  

(1)はじめに:レジリエンス

精神科・メンタル分野の言葉。今回は「レジリエンス」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

挑戦することは、ストレスがかかるということとセットです。そして、挑戦することは、一定の確率で失敗することもセットになります。

ここで大事なのは「ストレスを受けない」「失敗しない」ことではなくて、「ストレスや失敗があっても、そこから回復し適応する」ということ。

これはメンタル不調の予防・治療・リカバリーにも大事なことになります。

今回はこの「レジリエンス」について見ていきます。

(2)レジリエンスとは

レジリエンスは「打たれても回復する力」です。

<レジリエンスとは>

レジリエンスは、逆境は困難に直面しても回復し、乗り越える力です。

精神分野のみならず、さまざまなビジネス等の分野で着目されています。

様々な因子がありますが、その多くは後天的に獲得することも可能とにされます。

レジリエンスの理解で大事なのがストレスの2つの要素「危険因子と防御因子」です。

<危険因子>

危険因子は、困難やストレスへのもろさをもたらす因子です。

これは災害・病気・貧困など外的な要素や、生活での慢性的なストレスなどがあります。

これは可能ならなるべく減らす。どうしても減らせないものは、「防御因子」で乗り切ります。

<防御因子>

防御因子は、困難やストレスから身を守る、いわゆる「レジリエンスを促す要素」です。

これを強化することで「困難があっても折れない状態」に持っていきます。

これは、「先天的な因子」「後天的な因子」「環境因子」などさまざまな要素があります。

基本的な方向としては「危険因子を減らして防御因子を増やす」ということになります。

<精神的回復力(小塩ら)>

ここで精神的回復力について、研究者小塩氏らの研究があり、3つの回復の力の要素が言われます。

①新奇性の追求

新しい物事に興味を持って前向きに取り組んでいくところ。

②感情調整

その中でも、特に怒りなどのいわゆるネガティブな感情をいかにコントロールするか。

③肯定的な未来志向

将来への楽観性を持つこと、そしてその土台としての自己肯定感を持つことです。

<レジリエンスを促す2つの要因(平野ら)>

ご質問としては「こういった能力は元から決まっていて変えられないんじゃないか」とあります。

答えとしては「変えられる要素は少なくはない」とお答えします。

平野氏らにより、レジリエンスを促す2つの要因が言われています。

①資質的要因

もとの性格・社交性などの先天的な要因です。

②獲得的要因

問題解決・自己理解など後天的に身につけていく要因です。

<レジリエンスの構成要素>

ここは諸説ありますが有名なのは、ライビッチ博士提唱の6つの「レジリエンスコンピテンシー」です。

「自己認識」「自制心」「精神的柔軟性」「現実的楽観性」「自己効力感」「人とのつながり」の6つです。

①自己認識

自分の考えや感情などを認識する力、いわゆる「セルフモニタリング」の力です。

②自制心

目的のために自分の思考・感情・行動などを変化させる力、一種の「セルフコントロール」です。

③精神的柔軟性

物事に対して、さまざまな視点から見て視野を広く取る、いわゆる「心の柔らかさ」です。

④現実的楽観性

「自分は未来をより良くできる」と信じ、そのために実際に「行動」することができる力です。

⑤自己効力感

途中いろいろあっても「最終的に自分はやれる」と思える、根本的なところでの「自己肯定感」です。

⑥人とのつながり

他者との信頼関係を作っていく能力。先天要素のほか、後天的な部分も指摘されます。

(3)精神疾患とレジリエンス

このレジリエンスは「多くの精神疾患の多くの部分で活用できるもの」です。

<精神疾患とストレス>

多くの精神疾患の発症にストレスが関与します。

そして、治療の中でもさまざまな角度でのストレス対策があります。

また、再発予防やリカバリーに対しても、ストレス対策が非常に鍵になります。

<精神疾患とレジリエンス>

多くの精神疾患はレジリエンスの強さで、ストレス時の発症リスクが変わるともされます。

なのでこの「レジリエンスの強化」が精神疾患の予防・治療等に有効と期待されます。

そして「レジリエンス」は後天的に高められる要素も少なくない事がポイントです。

<レジリエンスが影響する精神疾患>

このレジリエンスは、かなり多くの精神疾患に対して影響します。

「うつ病」「統合失調症」「発達障害」についてが代表的です。

<レジリエンスが影響する治療段階>

これは実際、ほぼ全段階が該当します。

「発症予防」「治療」「再発予防」そして「リカバリー」の全てに影響します。

①発症予防

発症予防でまず大事なのは「ストレスをまずはうまくかわす」こと。

そしてかわせなかったストレスを「受けた部分は回復する」ことです。

そして、その中でなるべく孤立せずストレスを共有することで、その影響を減らしていきます。

②治療

まずは「セルフモニタリング」自分の状態を見る能力を獲得していきます。

その上で「考えのくせの調整」や「視野の調整」など「精神的な柔軟性」を習得します。

そして振り返りなどを通じての「自己信頼」「自己肯定」を目指します。

③再発予防

まず自分の状態を観察して「再発の前ぶれに早い段階で気付く」ことが大事です。

そして、「ストレスをかわしていき、受けたら回復する」こと発症予防と共通します。

その中で主治医・友人等に相談して、悪化をなるべく防いでいきます。

④リカバリー

どうしても「リカバリー(自己実現)」を図っていくと、ストレスは増えてきます。

その中で「増えるストレスと自分の性質の観察」をしていきます。

そして、柔軟にかつ自信を持ち、「自分の人生を生きて」いきます。

その中で「自己信頼」自分を信頼することを土台に、他者との繋がりを模索します。

(4)レジリエンスの改善法

レジリエンスは、後天的な技術として獲得・改善できる部分も少なくないです。

「ストレスマネジメン」「思考の柔軟性」「マインドフルネス」「スキルトレーニング」がその例になります。

①ストレスマネジメント

ストレスマネジメントでは、「技術としてストレスを管理する」ことになります。

具体的にはさまざまな技法がありますが、それを状況に応じて、複合的に使っていきます。

その中で「新しい技術」は、徐々に反復練習などして身につけていきます。

②思考の柔軟性

まずは「認知再構成」、「別の見方を探す」ことを日々のの習慣にしていきます。

そして、一歩引いて全体を見る「メタ認知」も有効です。

その上で、自分の行動の自他への影響を分析する「行動分析」も参考になると思われます。

③マインドフルネス

マインドフルネスは、自分の思考・感情などを観察する練習です。

これは他の色々な介入をする為の土台にもなり、非常に大事です。

習得には得意・苦手は実際ありますが、苦手でも反復練習で徐々に習得する余地があります。

④スキルトレーニング

先天的な「弱点」は人により様々ありますが、ここを「スキル獲得」でカバーしていきます。

「感情調整」「問題解決」「ライフスキル」などさまざまなスキルがあります。

そして「対人面」も、とかくセンス的な話が言われがちですが、これも多くはスキルでカバーできる余地があります。

(5)まとめ

精神科・メンタル分野の言葉「レジリエンス」について今回見てきました。

このレジリエンスとは、ストレスや困難に直面しても回復・適応する力で、その中で後天的に獲得できる部分も少なくありません。

多くの精神疾患対策にレジリエンスが重要で、予防・治療・リカバリーの各段階で力を発揮します。

多くの要素は、反復練習で改善の余地があります。

自己観察(セルフモニタリング)を土台にさまざまなスキルを獲得し、ストレスに対して柔軟に対応できるようにしていきます。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)