セルフモニタリング

自分の状態を観察する

セルフモニタリングは考え・感情など自分の状態の観察です。

 

自分で精神面の改善を図る「セルフケア」の土台です。

 

動画:セルフモニタリング

もくじ

 
  1. (1)はじめに:セルフモニタリング
  2. (2)セルフモニタリングとは
  3. (3)セルフモニタリングの土台としてのマインドフルネス
  4. (4)「認知(考え)」のセルフモニタリング
  5. (5)「行動」のセルフモニタリング(行動分析)
  6. (6)アンガーマネジメント(感情の観察)
  7. (7)体の状態の観察(慢性疼痛を例に)
  8. (8)まとめ
  9.  

(1)はじめに:セルフモニタリング

精神科・メンタル分野の言葉。今回は「セルフモニタリング」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

精神疾患への取り組みで、自分で日々対処していく「セルフケア」が注目されています。

一方「セルフケア」の前提は「自分の状態が見えていること」、これがうまくいかないといくら対策しても「ずれた対策」になってしまいます。

この「自分の状態を観察すること」をセルフモニタリングといいます。

今回は、この「セルフモニタリング」について見ていきたいと思います。

(2)セルフモニタリングとは

セルフモニタリングは、「自分の状態を観察すること」。

<介入の土台は状態の把握>

例えば、何か歩いていて、水たまりがあることを把握したら、それを「避ける」という行動に移っていきます。

そして受験勉強でこのままでは合格が難しいという判定があった場合に、勉強量を増やして対応することがあります。

このように状態がわかって、はじめて的確な介入ができるということがあります。

<これはメンタルでも同じ>

生活習慣を変えるには、まず自分の生活習慣を把握しておく必要があります。

そして「怒りを抑える」ためには、まず「自分が怒っている」ことを把握することが大事です。

考えのクセを直すには、まず「自分の考えのくせ」を把握しておくことが大事です。

<これは案外抜けることが多い>

例えば大量飲酒や過食の生活習慣がありながら健康食品に傾倒する。これでは健康食品の効果が打ち消されてしまいます。

あとは、自分の怒りに気付かず、怒りを抑えるという発想になかなか至らない場合。

そして本での「べき思考に至らない」ことをす「べき」と、逆に周りに「べき思考」的に押しつけてしまう場合があります。

このように「観察なき介入」は、要点を外してしまうことがあります。

そのため「セルフモニタリング」自分の状態の観察はセルフケアの基本です。

(3)セルフモニタリングの土台としてのマインドフルネス

マインドフルネスは「自分の状態を感じ取る練習」です。

<マインドフルネスとは>

マインドフルネスは、自分の状態に集中しそれを感じ取ることです。

状態のほか、考えや行動なども観察しうるところがあります。

そして、これはなかなかすぐには身につきにくい一方で、地道な反復練習で習得できる余地があります。

<観察できること>

「考え(認知)」は繰り返すことで観察することが可能です。

あとは自分の「行動」と自他への影響の観察。

あとは自分の「感情」はどうかを観察するところ。

そして「体の状態」を観察するところになっていきます。

そして、「まずは状態を観察する」それだけでは困難な時に初めて「介入」をします。

(4)「認知(考え)」のセルフモニタリング

感情が動いた時の考えを観察することが代表的です。

<出来事から感情までの流れと「考え」>

出来事があって、何か考え・捉え方があって感情に移っていくというところ。

「感情が動いた」場面・出来事を見ますが、その中間にどんな「考え」があったかを特に繰り返し観察します。

<繰り返し行って「くせを観察する」>

様々な場面でこの「考え」を観察していきますと、自分の考えのくせが見えてきます。

そして「くせによる感情などへの影響がどうか」も見えてきます。

ここで悪影響が大きい場合は、そのくせの「修正」を検討することになります。

「修正」に関しては、見えて意識すれば、それだけで多くは修正が可能です。

それでも修正困難な一部に関してはじめて「介入」をしていきます。

<修正困難時の介入の例>

まずは「考えの根拠、その逆の根拠」を見てバランスを取る方法。

あとは「視点を変える」あの人だったらどう考えるかなどで視点を変える方法。

そして実際やってみたり、人に聞いてみたりする「行動実験」をする場合もあります。

(5)「行動」のセルフモニタリング(行動分析)

ここでは「行動の影響を日常的に観察」します。

<行動の影響>

何か「行動」話す・動くなど全般をする際、この行動は相手や周囲に影響を与えます。

例えば、相手に怒鳴ったりすれば、相手や周りが萎縮するなどの影響が出ることがあります。

そして、行動はめぐって自分にも影響を与えます。

行動自体の影響もありますし、行動の結果に伴って自分に跳ね返る影響もあります。

結果、生活というのは、日々の行動の繰り返しであり、自分や他者への影響を繰り返しているとも言えます。

<行動分析>

行動分析では、「自分の行動の自分や他者への影響」を振り返っていきます。

そして、プラスが多い行動は増やしていき、マイナスが多い行動は減らしていきます。

<行動分析の段階3つ>

まず初めは以前の行動を「ゆっくり丁寧に」振り返っていきます。

慣れてきたら、次第に素早く「多くの行動を」振り返っていきます。

そして、理想的には、日々の生活の中で「行動する前に」分析を素早く行い、プラスの行動をその場で選んでいきます。

ここまでできると、だいぶ日々の行動が変わってきます。

(6)アンガーマネジメント(感情の観察)

「さまざまな技術も観察と気づきが前提」という事がポイントです。

<アンガーマネジメントの例と前提>

アンガーマネジメントは、最近よく知られるようになった技法です。

例えば6秒間深呼吸をしてリラックスを図る方法があります。

あとは「タイムアウト」その場を離れることで怒りを鎮める技法があります。

ただし、これらの技法は、前提として「自分の怒りに気づいて」はじめて利用可能になります。

<注意:気付かず怒っている場合>

しばしば自分の感情を観察できない場合に「気づかず怒る」ことがあります。

そして気づいていなければ先ほどの「アンガーマネジメント」技法も機能しません。

「アンガーマネジメント」いろいろ技法はありますが、土台は「自分の怒りをしっかり観察する」ことです。

<観察にはマインドフルネス>

対策は「マインドフルネス」、自分の感情を観察し、把握していきます。

そしてそれが困難な場合は「その周辺」、呼吸の状態や体の感覚等をヒントに観察します。

そして、人によっては強い感情に圧倒され、なかなか感情を振り返れない場合があります。

この場合は、リラックスを図りながら無理せず、徐々に感情に触れる必要がある場合もあります。

(7)体の状態の観察(慢性疼痛を例に)

体の状態は介入が難しいですが、周辺の「考え」「感情」に介入する方法はあります。

<慢性疼痛とは>

慢性疼痛は、さまざまな原因での慢性的な痛みになります。

しばしばこの痛みに「否定的な感情」や「否定的な考え」が連動します。

これらが結びつくことで、さらに痛みが慢性化しかつ強まってしまいます。

<慢性疼痛の観察と介入>

ここで痛み自体はいくら観察しても残りますが、周辺の考えや感情などは、観察後に介入の余地があります。

【段階1:痛みの観察と受け入れ】

この慢性疼痛の痛みについて、まずはありのままを感じて「痛みがある」ことを受け入れていきます。

並行して、痛みと連動する「考え」や「感情」を観察していきます。

そして、「行動への影響」痛みによっての行動の変化を観察していきます。

【段階2:痛みと他の要素との切り離し】

まずは「痛み」と「否定的な考え」とを切り離していきます。

そして次に「痛み」と@否定的な感情」を切り離していきます。

その上で「痛み」「行動」と切り離していきます。

「痛み」とらわれての行動の変化を振り返り、、痛みはあるけれども「本来すべきことをする」ことに集中します。

(8)まとめ

今回は、精神科・メンタル分野の言葉「セルフモニタリング」について見てきました。

精神疾患では「セルフケア」が注目されますが、その土台には自分の状態をしっかり観察する「セルフモニタリング」があります。

セルフモニタリングの土台は、自分の状態を観察する「マインドフルネス」です。

体の状態以外に考え・行動・感情も観察できる余地があります。

そして、考えや行動も「まず観察して」、必要な時だけ修正することが基本になってきます。

それでも難しい時のみ、専門的な介入を検討することになります。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)