自責
自分に原因を求める
「自責」とは、ストレスや結果の原因が自分にあると思う事です。
その中でも建設的な「反省」は自己改善に重要ですが、過剰は危険です。
もくじ
(1)はじめに:自責
精神科・メンタル分野の言葉。今回は「自責」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。
何かストレスやトラブルがあったとき、相手よりも自分を責める「自責」。
うつ病などの背景の「考えのくせ」としても述べられる一方で、人を責めない「リーダーシップのあるべき姿」と言われることもあります。
この「自責」どう考えていったらいいでしょうか。
今回はこの「自責」についてみていきます。
(2)ストレスの反応3つの方向
ストレスがあったとき、ストレスへの反応は大きくは3方向に分かれます。
ストレスがあった時、人によっては自分の責任と思う。これは「自責」と言います。
人によっては、他者・相手の責任だと思う人がいます。これを「他責」といいます。
どちらのせいでもないというふうに思う人もいます。これを「無責」と言います。
3つまとめますと、まず「自責」は何かあった時、自分の責任だと思う。
「他責」は他者の責任だと思う。「無責」はどちらの責任でもないと思う、こうした違いがあります。
(3)自責とは?
自責は、「結果の責任が自分にあると思うこと」です。
<自責とは>
自責は、物事の結果の原因や責任が自分にあると思うことです。
これは成長や社会性においては有益とされることが多いです。
一方で、行き過ぎるとストレス過多になり、うつ病等の引き金になりえるため注意が必要です。
<自責のメリット>
まずは結果を振り返り「学ぶ」ことで、学習や成長につながってくること。
そして相手を攻撃せず萎縮させないため、場の「心理的な安全性」を保てます。
そして、一般的には社会的に望まれる態度と評価されます。
<自責のデメリット>
一方でやり過ぎてしまうと、自己肯定感が低下し自己否定につながることがあります。
そして、悪意がある相手に「利用」「搾取」されるリスクには特に注意が必要です。
また強いストレス負荷がかかるため、過度になると「うつ病」発症などのリスクが出てきます。
ここで「自責する・しない、どちらがいいですか?」というご質問があります。
これは自責の内容などで変わってくるというところがあります。
(4)「自責」の3種類
この自責と言っても、内容が違うことがあります。
この自責を3種類に分けると、まずは「反省」。2つ目が「後悔」。3つ目が「自己攻撃」になります。
<反省とは>
「反省」は、過去の結果を振り返って客観的に評価をすることです。
そこから以後の改善への洞察を得て、今後の成長と自己改善につなげていきます。
<後悔とは>
「後悔」は過去の結果への否定的な感情的な反応です。
今の自分の自己否定に繋がる一方、逆に今後の学びにはつながりにくいです。
<自己攻撃とは>
「自己攻撃」は結果などに関し、自分で自分を攻撃する状態です。
これはある種「自分へのパワハラ」的な面があり、自己肯定感の低下は避けられません。
かつ「自己否定・自己攻撃への不安」から挑戦の回避、いわば消極性につながる恐れも大きいです。
<3つの「自責」への対応>
まず「反省」は、プラス要素が大きいためなるべく増やしたいところです。
一方で「後悔」や「自己攻撃」はマイナス要素が大きいため、最小化が望まれます。
<基本は他責より反省>
次の2つの理由で、基本的には他責よりも反省が望まれます。
①完全はほぼない
例えば、対人トラブルがあった時に「どちらかのみ一方だけが悪い」ことは実際多くありません。
少なくとも、何がしかの「今後に向けての改善の余地」は大抵あります。
それを改善につなげていくのが「建設的」と言えるかと思われます。
②変えられるのは自分
自分自身は反省などを通じて変化することは可能ですが、他者を変えることは一般には困難です。
そして、これを強引に変えに行くと、ある種ハラスメント的になり、トラブル等のリスクも出てきます。
ただ、例外は「相手に悪意がある時」になります。
<「悪意の他責」に「自責」は弱い>
時に、反撃しなさそうな相手に対し、「他責」を使ってストレスを発散する人がいます。
そして、この「悪意の他責」を受けた場合に、そこから学べることは正直少ない。
一方、巧妙に自責するよう仕組まれるため負荷は大きくなり、うつ病のリスクは高くなります。
<注意が必要な例>
例えば悪意がある上司からのパワハラ言動があった時、自責しすぎると危険があります。
また、「悪意がある配偶者の心理的な攻撃」があった時、これもリスクが高いです。
(なお、ASDの人の「意図しない」いやな行為とは違う意味です)
後は「悪意がある親からの心身からの攻撃」、特に子供は逆らうことが困難なため、注意が必要です。
同級生などからの「悪意あるいじめ」も似た面があります。
<自己防衛のための「他責」活用>
このように悪意を仕掛けられた時には、一種の「他責」が必要になってきます。
一種の自己防衛として「他責」を活用し、相手の攻撃から自分の尊厳を守っていきます。
「悪意」や「理不尽」にしっかり主張して自分を守り、ある種「なめられない」ようにします。
ここで大事なのは一種の「覚悟」、やり返されるリスクは想定しつつも腹をくくって行動に移ること。
そして時に一人でやると危険な場合がありますが、その時は一歩引き、第三者などの協力を仰ぎつつ方法を検討します。
<「後悔」と「自己攻撃」を減らすには>
基本的には「後悔」「自己攻撃」の内容を踏まえ、他の方法で置き換えていきます。
もし背景の事実を建設的に扱えそうであれば、「反省」への置き換えが望まれます。
一方で、建設的にとらえにくい不運等であれば、「無責」への置き換えが現実的です。
そして、「相手に悪意がある」場合は、自分で自分を守る権利を踏まえての「他責」が必要になります。
(5)うつ病の「自責」と対策
うつ病の自責には、対策が必要になります。
<うつ病とは>
うつ病は、落ち込みや罪悪感(自責)などが目立つ脳の不調です。
脳のセロトニンの不足が背景とされ、抗うつ薬や休養などで対策します。
そして、罪悪感(自責)が強いと、自分で自分を攻撃し、しばしば悪循環に至ります。
<うつ病の自責>
うつ病の自責、症状としては「罪悪感」に分類されます。
これは脳の不調(セロトニン不足等)があり、結果罪悪感が出て「後悔」や「自己攻撃」が目立ちます。
この状況を放置すると自分で自分を攻撃するため悪循環になり、うつの慢性化・悪化に至りやすくなります。
<うつ病の自責への対策>
対策は主に3つ、まずはうつ病の治療「抗うつ薬」、2つ目もうつ病の治療としての「休養」、そして3つ目が「認知再構成」です。
①抗うつ薬
抗うつ薬は脳のセロトニンを増やし、うつ病の改善を図るものです。
うつ病での「自責」は、脳の不調からの症状といえます。
なので薬で脳の状態を改善すれば、結果としてこれらも改善が期待できます。
②休養
休養は、ストレスから切り離し頭を休ませることでうつ病の改善を図ることです。
これは脳の状態の改善を抗うつ薬同様図っていくことになります。
そのため休養で脳の状態が改善すれば、症状としての「後悔」なども改善が期待できます。
③認知再構成
認知再構成は、何か考えのくせがあった時に「別の見方はないか」を探す方法になります。
うつ病の場合、まさにこの「後悔」や「自己攻撃」脳方向に偏った「考えのくせ」が出やすくなります。
その時に「無責」などの別の見方はないかを、意識的に探すことを繰り返し練習していきます。
(6)まとめ
今回は、精神科・メンタル分野の言葉「自責」について見てきました。
ストレス反応の方向は「自責」「他責」「無責」の3つ。この中で、「自責」は結果の責任が自分にあると思うことです。
自責でも、建設的な「反省」と否定的な「後悔」「自己攻撃」ではだいぶ意味が違ってきます。
「反省」は建設的なので増やしていき、「後悔」や「自己攻撃」は破壊的なので減らしていきます。
うつ病では、脳の不調の結果「後悔」や「自己攻撃」に考えが偏ることがあります。
この場合はまず抗うつ薬や休養など「うつの治療」を行い、そのうえで別の見方を探す「認知再構成」を並行します。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)