介護うつ
介護に関連して出る適応障害・うつ病
介護うつは、介護関連のストレス持続を背景として生じる適応障害・うつ病です。
「長期で目標を定めにくい」介護の特性から、完全主義になりすぎると特にリスクがあります。
適応障害・うつ病に準じて治療をしつつも、背景の介護への環境的・心理的整理を並行します。
もくじ
(1)はじめに:介護うつ
様々なうつ病・適応障害。今回は「介護うつ」について見ていきたいと思います。よろしくお願いします。
精神科クリニックにおいて、いろいろな相談を受ける中で、ご家族の介護に関連してのうつ症状・落ち込みなどのご相談を受けることは少なくありません。
介護の特性と生活などがうまく折り合えないときに、特にストレスが増えて不調になってしまいやすいということは臨床上経験するところになります。
そこも含めて、今回は「介護うつ」について見ていきたいと思います。
(2)介護うつと、介護の特徴について
まず、この「介護うつ」をまとめていきますと、ご家族の介護に伴う疲れやストレスを背景としまして、落ち込みなどのいわゆるうつ症状が続くという状態になってきます。
一般的には、はじめは大半は適応障害・ストレスの反応というところなんですけれども、続いていきますとうつ病に移行しているという状況になることも少なくはありません。
ここにおいて、介護というところが一つポイントになります。
<介護の特徴>
①非常に長期になりやすい
どうしても親御さんなどの介護というところになりますので、これは年単位で続くことが少なくありません。
そして、認知症などを合併したときは、次第に症状が進んでくる、次第にストレスがふえてくるということも少なくないということがあります。
②目標を定めにくい
例えば、営業の仕事などとノルマを達成するとか、何かを達成するということは仕事などでは多いわけですけれども、介護においては、基本的には親御さんなど相手の方の状況次第ということがあります。
かつ症状も進むということがあると、そうなってくると、なかなか目標ということを定めるという作業が非常にやりづらいというのが一つ特徴になってきます。
③家族関係が強く出る
どうしても長い期間、関係が近い状態が続くということがあります。
家族関係はもとからよければいいんですけれども、もとの関係が複雑なところがあると、そこがより強く出るということがあります。そうすると、いろいろ影響も強く出るというところがあり得るかと思われます。
(3)介護うつの治療法について
基本的にはうつ病・適応障害に準じての治療ということになります。
1つ目としては、薬の治療・薬物療法。抗うつ薬を主体とする場合もありますし、補助的に睡眠薬などを使うという場合もあるかと思います。
2つ目は、休養や疲労やストレスの対策というところになってきます。疲れやストレスがたまると悪化しますので、その対策をとっていくということがあります。そして、3つ目が環境の調整、ストレスの状況環境を調整するということになります。
(4)介護に関しての環境調整(持続可能な方向へ)
そして、介護に関しては、長期続く介護に対しては環境調整、具体的には長く続く介護をいかに「持続可能」続けやすいものにしていくかというところが非常に大事になってきます。具体的な対策の例は以下の3つです。
①介護サービスの活用
必要があれば、介護保険制度を活用していきまして、介護サービスを活用していく、デイサービスであったりなどを活用していくということです。
そして、サービスの調整、時期によって必要なサービスというのはリアルタイムに変わってきますので、そこはケアマネジャーさんと相談をしながら必要なサービスを調整しながら活用していくということになるかと思います。
②完全主義にならない
確かに目標が明確だと完全主義になってもいい部分はありえますが、この介護の場合は目標がなかなか明確に定めにくく、かつ長期になります。
そのため、短期的に完璧にやるというのは逆に燃え尽きてしまいますので、ゆるめでも長く続けられる方法を探っていただけるとと思います。
③相談相手を作る
どうしても孤立して抱えてしまうと、ストレスは加速度的に増えてしまいます。
それを防ぐために相談できる相手をつくって、ストレスがたまったら早めに相談をしてストレスを溜め込まないようにしていきます。
(5)まとめ
今回は介護うつについて見てきました。
介護うつとは、ご家族の介護に伴う疲れストレスを背景としたうつ状態になってきます。
介護の特徴としては、長く続いてかつ目標は定めにくいあと、ご家族関係が強く出るということがありまして、非常にストレスが強く出る可能性があります。
治療としては、うつ病・適応障害に準じた治療をしていきますけれども、やはり介護を持続可能・長く続けられるようにするための環境調整が、かなり大きな比重を占めると思われます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)