うつ病・適応障害の治りにくい時の原因4つ
隠れ「躁うつ病」の可能性も
うつ病・適応障害で治りにくい時、生活習慣・環境・考え方をまず調整します。
それでも困難な時、隠れ「躁うつ病」の可能性を検討します。。
もくじ
(1)はじめに:うつ病・適応障害の治りにくい時の原因4つ
今回は「治りにくいうつ病・適応障害の原因4つ」です。
心療内科でうつ病・適応障害の治療をすることは多くあります。
お薬の治療であったり、休養であったり、それで良くなるペースは非常に個人差が大きいです。
なので、あまり人とは比べないでくださいという話もよくしたりします。
その中で「なかなかよくならない」というご相談を受けることがあります。
確かに人の状況により「よくならない背景」は様々ですが共通点が4つほどあります。
(2)原因①生活習慣
1つ目は「生活習慣」になります。
<生活習慣の良くない例>
例えば、まず生活リズムが逆転をしてしまっている場合があります。
あと、日々お酒を多く飲んでしまう方もいらっしゃいます。
人によっては、家からあまり出ない・活動をあまりしない・動かない方もいます。
こういった生活習慣があると、なかなか改善に持っていきにくい面があります。
<うつ治療でも行動の積みかさねが大事>
人は日々行動の積み重ねが大事ということがあります。
調子をよくするための積み重ねでもあり、その行動が「脳に刺激になる」面もあります。
どういう行動習慣を積み重ねるかが、うつの治療にも非常に大きいです。
なのでメンタルにプラスになることを積み重ねていくことがやはり大事です。
<望ましい行動の例>
まずは「生活リズムを整える」一定の生活リズムで生活すること。
あと、「食事」はしっかりとり、お酒は0までは困難でもなるべく減らすこと。
そして日中、活動をする・体を動かす習慣をつけていくことが大事です。
(3)原因②環境との相性
2つ目が「環境との相性」です。
<環境との相性が悪い例>
人によっては、職場で「ストレスを感じる上司との関係」などでストレスが続く方がいます。
家で居場所がなく、結果家でストレスが続く方もいます。
人によっては介護や子育てでのストレスが続く方もいます。
<環境から受け取ることも行動の1つ>
人は行動が大事という話をしましたが、環境からいろいろなものを受け取るのも1種の「行動」です。
その積み重ねもやはりうつの症状に非常に影響してきます。
そのため、どうしても環境との相性が悪い場合は、リスクは踏まえつつも環境を変えることが選択肢の一つです。
<環境を変える例>
まず「仕事」では、転職や異動の相談をするなどがあります。
家の環境に関しては、一回話し合いをすることがあります。
そして、介護や子育ては抱えすぎずサポート資源の活用を検討することがあります。
(4)原因③考え方のくせ
3つ目が「考え方のくせ」です。
<考え方のくせの例>
まずは「自分を責めすぎてしまう」くせがあります。
あとは「完全主義」全か無かで考えてしまうくせがあります。
そして「他の人と比べ過ぎてしまう」くせもあります。
<考えることも一種の行動>
「考える」というのも1種の行動になります。
出来事に対して「どういうことを考えるか」の積み重ねがうつの症状に非常に影響してきます。
そのためご自身の「考えのくせ」がどうかを見ていき、バランスをとることを意識することが大事です。
もし「自分を責める」等の考え方のくせがあれば、「別の考え方はないか」探す習慣が望まれます。
<望まれる考え方の例>
まずは自分も人を責めない「無責」の考え方が望まれます。
そして「考えること」で前向きになれることを考えることが望まれます。
逆のことはあまりしない方がいいと思われます。
<自分を追い詰めるくせが強い場合>
一方で人によりどうしても自分を責める」なかなか変えにくい根強いくせがあることもあります。
対策の基本は「なるべく受け流す」ことです。
「考えが出てくる」ことは止めにくいので、それを「真に受けない」ことで影響の軽減を図ります。
もう一つの対策は「そのパターン自体を消すことは難しくても、だんだん薄めていく」こと。
具体的には、今から徐々に、うまくいった「成功経験」積み重ね、上書きしていくことです。
(5)原因④「躁うつ病」の可能性
4つ目が「躁うつ病(双極症)の可能性」になります。
<難治例には、隠れ躁うつ病の可能性>
抗うつ薬などで治療を続け、生活習慣・環境・考え方等の対策をとっても症状が続くことがあります。
その時もう一つの可能性として「躁うつ病(双極症)」の可能性を検討します。
<躁うつ病(双極症)とは>
躁うつ病は躁状態、うつ状態の逆の症状が周期的に出る脳の不調です。
ただし躁が軽い「双極症Ⅱ型」では、大半がうつだったり躁が軽い等で、うつ病と判別困難なことがあります。
うつ病と躁うつ病は有効な薬が違うため、この2つを見分けることは大事です。
もし、その兆候があったら、ぜひ主治医の先生に相談してみていただけたらと思います。
<まずは以前を振り返る>
躁うつ病の可能性を考える時大事なのが「過去に躁気味なこと」がなかったかの振返りです。
まずは「ある時期だけ妙に活動的になっていた」場合。
そして「ある時期だけお金を使い過ぎてしまう」場合。
また「自覚はないが周りから(妙に元気など)違いを指摘される」場合。
躁状態が明確でない場合も、これらの場合の存在が一つ参考になるかと思われます。
<その他の躁うつ病の可能性を考える要素>
例えば「家族に双極性障害・躁うつ病の方がいる場合」、少し可能性が上がると言われます。
また「うつを周期的に繰り返す」場合、この「周期性」がある場合躁うつ病の可能性が上がると言われます。
あと「抗うつ薬を使ったときに躁や軽躁になった」場合。これも躁うつ病の可能性が上がると言われています。
これらが思い当たり、かつ症状が続く場合は、一回主治医の先生と相談してみてください。
(6)まとめ
今回、「治りにくいうつ病・適応障害の原因4つ」を見てきました。
うつ病・適応障害の治療、もちろん人によってペースは違う一方、確かに治りにくい場合があります。
まず取り組める対策としては「生活習慣の改善」「環境の調整」「考えるくせの調整」があります。
ただ、それらをしても効果が出ない場合、いわゆる「かくれ躁うつ病」の可能性があるかもしれません。
もし思い当たるところがあったら治療している主治医の先生と相談をしてみてください。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)