適応障害の治し方6つ
環境調整・ストレス対策
適応障害はストレス反応であり、治療の柱もストレス対策です。
外側への「環境調整」、内側への「ストレスマネジメント」が柱です。
もくじ
(1)はじめに
今回は「適応障害の治し方6つ」について解説いたします。よろしくお願いします。
「適応障害」はどう治せばよいのでしょうか。
ストレスから離れると早目に改善することも少なくありません。一方、繰り返すことや長く続くこともあります。
そうした面も含めてどう治していけばいいでしょうか。
今回は「適応障害の治し方6つ」について解説いたします。
(2)適応障害の改善はストレス対策
「ストレスを減らすためのさまざまな対策を」とることになります。
<適応障害とは>
適応障害は「ストレスへの反応によるさまざまなうつ状態」です。
脳の不調はないとされ、ストレスから離れると改善するとされます。
ストレス対策が治療の柱があります。
<ストレスを浴槽に例えると>
ストレスを浴槽に例えます。
お風呂があって水がたまってきます。そして水を出す部分があって、このバランスで「ストレスがたまるか」が決まります。
そして「出す」よりも「たまる」が多ければたまってきてあふれて症状が出てしまいます。
また、その耐性(容量)というのも一つ問題になってきます。
ストレスをあふれさせない対策は、「ためない」「発散する」「耐性をつける」の3つになります。
①ためない
まずは嫌なことがあっても、なるべく「受け流して」ためる部分を減らします。
そしてストレスがたまりにくい「環境選び」を心がけます。
そして「考えすぎない」自分でストレスを溜めてしまわないことが大事です。
②発散する
これはストレスの発散もありますし、休養を確保することもあります。
そして、自分に「プラスの声掛け」をしてある種発散する方法もあります。
③耐性をつける
まずは「生活の土台のところを安定させる」こと。
そして「自分の軸を明確化する」こと。
あとは「自分の状態を知って受け入れていく」マインドフルネスもあります。
<適応障害の治療>
まずは外のストレスへの「環境調整」があります。
そして、内側のストレスには様々な「ストレスマネジメント」があります。
そして、補助的に「薬物療法」をすることもあります。
<ストレスマネジメントの要素>
まずは土台としての「自己覚知」セルフモニタリングがあります。
その中で「ストレス発散法の改善」「考え方の調整」「生活面・土台の改善」の3つを並行します。
(3)適応障害の治し方6つ
さまざまな角度からストレス対策をとっていきます。
①環境調整
外からのストレスを減らす方法です。
<環境調整とは>
環境調整は、自分の環境を変えることで、外的なストレスを減らす方法です。
外的なストレスが大きい場合は大きな効果を見込みます。
また、転職など大きな方法もありますが、より細かい方法でも効果を見込める場合があります。
<大きな環境調整の例>
まずは仕事であれば「転職」をする方法があります
学校であれば「転校」するという話もあるかもしれません。
あとは家であれば「離婚」や「別居」する方もいます。
<より小さい環境調整の例>
まずは仕事なら上司と「仕事のやり方の話し合い」をします。
学校であれば「席替え」などを相談する場合もあります。
また「家族で話し合い」をして、色々なやり方を調整することもあります。
<環境調整が有効な場合>
特定のストレスが大きい場合には、環境調整が有効です。
そして、適応障害をあまり繰り返していない場合、他の環境では大丈夫の場合には効果が見込めます。
そして、ストレスを溜めやすい要素があまり目立たない時も有効性を期待します。
<環境調整に限界がある場合>
まずは外側の特定のストレスが必ずしも大きくない場合。この場合、環境を変えてもあまり変わらないかもしれません。
あとは「適応障害を繰り返す」という場合。これは環境を変えるだけでは変わらない可能性もあります。
そして、「ストレスをためやすいところが目立つ」場合。この場合はそこの対策が時に必要になります。
②自己覚知(セルフモニタリング)
「自分を知ることが対策への第1歩」です。
<自己覚知(セルフモニタリング)とは>
主には「自分の状態を知る」「自分の長所や短所を知っていく」「自分の特性や色んなことの相性を知る」の3つです。
1)自分の状態を知る
まずは自分の状態を観察して、その行動などを調整していくことです。
そして、何が自分の「感情の問題」かを知ることが大事です。
その中で、特に自分の「不調の前触れ」を知り対策を取ることが大事です。
2)自分の長所と短所を知る
長所を生かして、それを生かせる環境を選んでいくことが大事です。
一方、短所に関しては「限界を知りつつ」できるカバーの取組みをするのが現実的です。
そして「自分が思う」長所・短所と「外から見て」のそれは違うことが多いことも知っておきます。
3)特性と相性を知る
まずは「自分の特性や傾向を知る」こと。
そして自分の「環境や人との相性」をしっかり知っていくことが大事です。
そして自覚的な相性のほか「外から見ての」特性や相性も時に参考になります。
<苦手なら意識的に観察するマインドフルネス>
この「自己覚知」には、得意と苦手があります。
苦手であれば、意識的に取り組むいわゆる「マインドフルネス」が有効とされます。
マインドフルネスは、自分のまず「今の状態」に集中して観察していく方法です。
まずは、「自分の体の状態」を見て集中するこが基本です。
慣れてきたら「感情」や「考え」も集中して観察していきます。
③発散法の改善
「より効果的にストレスを発散する」ことです。
<発散法の改善>
まずストレス発散を十分に行い、ためないようにすることが、非常に大事です。
一方色々な状況があり、そこに対応できるよう幅広い方法を持つことも大事です。
そして「自分に合った」より効率のいい方法を探っていくのも大事です。
<幅広い方法を持つ>
例えば仕事が忙しい場合は「時間を掛けての発散」は現実的に困難です。
そうした場合は「短時間でシンプルな方法」も準備していくことが大事です。
そのほか「人がいない時」など制約条件に対応する幅広い方法を持っておくことが大事です。
<自分に合った方法>
「今している発散法が、本当に合っているか」を見極めます。
これは実際発散してその結果を見ていく「行動分析」で精度を確認することが大事です。
その上でより相性・効率が良い発散方法に徐々に置き換えていきます。
④考え方の調整
「自分で自分を追い詰めていないか」。
<考えのくせとストレス>
「考えること」自体は、本来、問題解決などの大事な方法です。
一方で、いわゆる「ぐるぐる思考(反すう思考)」の場合はむしろ逆効果です。
また、自分を追い詰める「考えのくせ」があれば、それ自体がストレスにつながってしまいます。
<考えのくせの例>
まず1つ目は、「過度の自責」自分を責めてぐるぐる考えが回ってしまう場合。
あとはいわゆる「べき思考」こうでなければならないというのが強いと自分を追い詰めてしまいます。
あとは「全か無か思考」完全でないと駄目と思ってしまうと、これも自分を追い詰めてしまいます。
<考えのくせの対策>
まずは「自分のくせ」どういうくせがあるかを知るということが第1歩です。
その上で、そのくせがあれば、それを減らすように意識的に日々取り組んでいくというのが2つ目です。
ただ、それでもどうしても「困難が根強いくせ」は「視点を変えてみる」等より専門的な方法を探ります。
⑤生活面の対策
「ストレスへの余力が対策にも大事」です。
<生活面の対策>
まずは「生活のリズム」をしっかり確保すること。
そして「睡眠時間」をしっかり確保すること。
あとは「疲労の対策」をしっかりすることです。
<シンプルにできる対策>
まず「運動する習慣」。これは発散にもなりますし、リズム改善にも役立ちます。
また「睡眠衛生の対策」眠りの環境を整えることで、睡眠を改善することは取り組みやすい要素です。
あとは「自覚的な休養の確保」意識的に「休める時に休む」を習慣にしていきます。
⑥薬物療法
「補助的に薬を使うことが」あります。
<薬は補助的に使う>
「うつ病」のように脳に働きかける直接的な効果は見込みにくいです。
一方で、不眠や考え過ぎなど悪循環があった時に薬が有効になる場合があります。
そして、「うつ病に移行しそうな場合」にも薬の必要性が高いです。
<使いうる薬の例>
1)睡眠薬
不眠に伴っての悪循環をさけるために使うことがあります。
2)抗不安薬
不安で考えすぎる「ぐるぐる思考になる」悪循環を断つために使うことがあります。
3)抗うつ薬
うつ病への移行を防ぐ、そして不安への効果も見込むところがあります。
(4)まとめ
今回は「適応障害の治し方6つ」について見てきました。
適応障害は「ストレス反応」でありまして、その対策の土台も「ストレス対策」です。以下の6つが代表的な方法です。
- ①環境調整
- ②セルフモニタリング(自己覚知)
- ③ストレスの発散法の改善
- ④考え方の調整
- ⑤生活面の対策
- ⑥補助的な薬物療法
取り組みやすく、かつ重要性が高いところから順番に取り組んでいき、適応障害の治癒と再発予防を目指していきます。
著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)