うつ病の薬物療法

特に抗うつ薬が治療の柱

うつ病は「脳のセロトニン不足」が関与し、その治療として抗うつ薬を使います。

 

抗うつ薬はセロトニンを増やす「SSRI」が代表的ですが様々な種類があります。

 

その他状態に応じて、睡眠薬や抗不安薬などを併用することがあります。

 

動画:うつ病の薬物療法

もくじ

 
  1. はじめに
  2. 総論:うつ病の薬物療法
  3. 各論1:抗うつ薬
  4. 各論2:睡眠薬
  5. 各論3:抗不安薬
  6. まとめ
  7.  

<はじめに>

今回は、「うつ病の薬物療法」についてやっていきたいと思います。よろしくお願いします。

うつ病の治療は、休養・薬物療法・精神療法の3本柱とよく言われます。この中で、薬物療法は直接的な治療ということのほか、休養を助けるためにも大事になることが少なからずあります。

今回は、この「うつ病の薬物療法」について、全体的に見ていきたいと思います。

流れとしては、まずは総論・うつ病の薬物療法全般を見ていきまして、そのあと各論・主に使う薬というのを見ていきたいと思います。

<総論:うつ病の薬物療法>

(うつ病とその治療)

まずは総論ですけれども、うつ病からまず見ていきましょう。

うつ病とは、落ち込みなどのうつ症状が長く続く脳の不調になってきます。

脳のセロトニンの不足が主にこのうつ病に関与するとされています。

なので、ストレスから離れるだけではなかなか改善が難しいところがあって、プラスアルファの介入が必要になってきます。

その中でうつ病の治療ですけれども、大きく言うと3つ、休養・薬物療法・精神療法になります。

(薬物療法について)

薬物療法の目的としては、まず直接的にうつを改善するセロトニンを増やすなどの作用もあります。もう一つが休養を助けるという作用です。

その中で主に使う薬を見ていきますと、抗うつ薬・睡眠薬・抗不安薬、この3つになってきます。

目的と使う薬ということでもう一回見ていきますと、直接的な改善を図るためには抗うつ薬を使っていきます。

一方で、休養を助けるためには、補助的な薬として、睡眠薬や抗不安薬を使うということになります。

うつ病での薬の使い方というのを見ていきますと、まずは直接的な改善のために多くの場合、抗うつ薬を使います。

その中で不眠・眠れないということがありますと、これは休養を妨げてしまうために、それ(休養)を助けるため睡眠薬を使うということになります。

そして、不安が強いとき、やっぱりこれで休養が取りづらくなりますので、休養を助けるために抗不安薬を使うことがあるということになります。

<各論1:抗うつ薬>

まず1つ目としては、抗うつ薬になります。

【抗うつ薬とは】

抗うつ薬とは何かまず見ていきますと、これは基本的には脳のセロトニンの補充などを通じましてうつ病の改善を図る薬になります。

SSRIという抗うつ薬代表的ですけれども、他の種類だったり、補助的なものもあったりします。

共通しているのは効くまではすぐじゃなくて、1から4週間ほど時間差になるというところがあります。

【セルトラリン(ジェイゾロフト)】

一番代表的な薬としては、ジェイゾロフト・セルトラリンがあります。

これは代表的な抗うつ薬SSRIの一つになってきます。効くまでが約2から4週徐々に増やして、改善後しばらくして徐々に減らしていくという薬になります。

初期に吐き気などお腹の副作用が出ますが、これは数日で改善します。一方で、急に薬をやめてしまうと離脱症状というものが出ますので、徐々に減らすことが大事になる薬になります。

【デュロキセチン(サインバルタ)】

2つ目がデュロキセチン(サインバルタ)になります。

これは代表的な抗うつ薬、もう一つの代表的な抗うつ薬でありますSNRIというものの一つになりまして、先ほどのSSRIと比べると意欲・やる気に対しての効果が強いとされるものであります。

SSRI同様、効くまでは2から4週かかりまして、徐々に増やし徐々に減らすということが大事になる薬です。そして、副作用と離脱症状に関してもSSRIと似たところがあります。

【スルピリド(ドグマチール)】

3つ目としては、スルピリド(ドグマチール)があります。

これは元は胃薬としても使っていたような抗うつ薬になりまして、うつ病に対しては少ない量を使うのがポイントです。

特に男性では副作用は少なくて離脱症状もあまり出ないということで使いやすい部分があります。

一方、女性の場合はプロラクチンというホルモンが上昇することで、生理が止まるなどの副作用が出ることがありますので、そこは注意しながら使うことになります。

【アリピプラゾール(エビリファイ)】

4つ目がアリピプラゾール(エビリファイ)であります。

これは元は抗精神病薬・統合失調症で使う薬なんですけども、少ない量を使うことによって、うつを良くする「抗うつ効果」を期待します。

これはSSRIなどと併用・一緒に使うことで、一番効果を期待するものになります。

少ない量だと基本的には副作用は少ないんですけれども、人によってはそわそわする「アカシジア」という症状、もしくは不眠などが出る場合に注意が必要です。

<各論2:睡眠薬>

【睡眠薬とは】

2つ目としては睡眠薬になります。睡眠薬とは何かといいますと、これは文字通り眠りを助ける薬になってきます。

そして不眠のタイプ、寝付けない場合と途中で目が覚める場合などによって、適した薬は変わってきます。

そして、最近では依存がないタイプの睡眠薬も使う場合があります。

【レンボレキサント(デエビゴ)】

具体例を見ていきますと、まずはレンボレキサント(デエビゴ)になりますけれども、これは代表的な依存がないタイプの睡眠薬になります。

その中で、特に入眠・寝つきに対して効果を期待するものになります。

ただ、効果に対しては個人差があるというところがあります。

【ブロチゾラム(レンドルミン)】

続いてがブロチゾラム(レンドルミン)になります。これは代表的なベンゾジアゼピン系の睡眠薬になります。

分類としては短時間型になりまして、寝つき(入眠)と途中で目が覚める(中途覚醒)両方に効果を期待するものになります。

そのため、代表的に使います。ただ、弱点としてはやはりベンゾジアゼピン系ですので、依存のリスクには注意が必要ということになります。

【エスゾピクロン(ルネスタ)】

続いてがエスゾピクロン(ルネスタ)になります。

これはベンゾジアゼピン系類似の睡眠薬になります。基本的に長さは超短時間型と言いまして、寝つきに特化したものになります。

これに関しては依存には注意が必要というところと、このエスゾピクロン、ちょっと苦味があるので、そこに注意が必要になります。

【ニトラゼパム(ベンザリン)】

続いてがニトラゼパム(ベンザリン)になります。

これは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の少し効き目の長いものになります。具体的には中間型ということになりまして、長めでありますので、途中で目が覚める方・中途覚醒に対して有効なものになります。

これも同じく依存には注意が必要というのと後、朝が残ってしまうことがある。眠気は残ってしまうことがあることに注意が必要になります。

【トラゾドン(デジレル)】

次にあるのはトラゾドン(デジレル)ということになります。

これは抗うつ薬なんですけれども、どちらかというと睡眠作用が強いものになります。

依存がないというところがメリットになりまして、中途覚醒・途中で目が覚める方に特に有効性を期待します。

一方で、どの量が適しているか(適量)などに個人差がありまして、朝の眠気やだるさには注意が必要なものになります。

<各論3:抗不安薬>

【抗不安薬とは】

3つ目が抗不安薬になります。

まず、抗不安薬とは何かですけれども、これは主にベンゾジアゼピン系でして、主にその場の不安を取るものになります。

依存に注意が必要ということがありまして、比較的依存が少ない、効き目の長い(超)長時間型をできるだけ使っていくということがあります。

逆に短いタイプに関しては、頓服、本当につらい時に使うか、ちょっと必要性が高い時に検討するということになります。

【ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)】

具体例としては、まずロフラゼプ酸エチル(メイラックス)があります。

これは代表的な(超)長時間型の抗不安薬になります。

1日効果がありまして、日中の不安を和らげるという効果、あとは結果として眠りを改善するという効果も期待するところがあります。

日中の眠気に一番注意が必要。あと相対的には少なめですけれども、依存にも注意が必要というものになります。

【ロラゼパム(ワイパックス)】

続いてはロラゼパム(ワイパックス)になります。

これは代表的な効果の短めな抗不安薬になります。飲むと大体15から30分で効果がありまして、6時間ほど効果が続くものになります。

依存のリスクがあるため頓服で使うのが安全、かつ症状が強い時に関しては、定期的に使うのを検討するということになります。

【ロラゼパムと似た薬】

このロラゼパムと似た薬は幾つかありましてご紹介します。

より短い「短時間型」のものでありますと、クロチアゼパム(リーゼ)あとはエチゾラム(デパス)というものがあります。

(ロラゼパムと同じくらい)効く期間が短いもの「中間型」に関しては、アルプラゾラム(ソラナックス)、ブロマゼパム(レキソタン)というのがあります。

<まとめ>

今回、「うつ病の薬物療法」ということで全体的に見てまいりました。

うつ病は脳のセロトニン不足が背景にありまして、その対策として抗うつ薬をまず使っていきます。また、不眠や不安があって休養が難しい時に関しては、睡眠薬や抗不安薬を補助的に使うことがあります。

抗うつ薬は効くまで時間がかかるというところ、一部の睡眠薬や抗不安薬に関しては依存のリスクというところに注意が必要になります。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)