うつ病の休養

頭を休ませて、徐々に回復を図る

うつ病の治療の柱の一つに「休養」があります。頭を休ませ徐々に改善を図ります。

 

症状強い時は、休職などを通じて一旦休養に専念して改善を図ります。

 

仕事等しながらであれば、限られた時間での効率的な休養が望まれます。

 

動画:うつ病の休養

もくじ

 
  1. はじめに(うつ病の「休養」)
  2. ①うつ病での「休養」の大事さと難しさ
  3. ②しっかり休むこと(治療としての休養)
  4. ③時間制限ある中での休養(再燃予防・発症予防の休養)
  5. まとめ
  6.  

<はじめに:うつ病の「休養」>

今回は、「うつ病の休養」についてやっていきたいと思います。

うつ病の治療は、休養・薬物療法・精神療法これが3本柱とよく言われます。その中で「休養」休むことの重要性はよく言われますが、一見単純に見えて、案外奥は深いのもこの休養です。

今回はこの「休養」について少しいろいろな角度から見ていきます。

今回の内容大きく言うと3つです。

1つ目が「うつ病での休養の大事さと難しさ」、2つ目が「しっかりと休むこと」治療としての休養の話、3つ目が「時間制限がある中での休養」再燃予防や発症予防としての休養です。

(1)うつ病での休養の大事さと難しさ

<休養の意味と、成功例・失敗例>

まずは、「うつ病での休養の大事さと難しさ」。

休養の意味をまず見ていくと、これはストレスから離れてある種「頭を休ませる」というのが意義になります。

うまくいく例としては普通に休む以外にも、例えば軽く散歩しつつ頭は休まっているのも休養に入ります。

一方で、逆にもうベッドに入り物理的に体は休んでいるけれども、考え事で頭が休まらないなら、これはあんまり休養になっていないです。

<うつ病のときは休養は必ずしも簡単ではない>

こういった休養ですけれども、この休養、「休むなんて簡単じゃないないですか」というご質問を受けることがあります。

答えとしては、「特にうつ病のときにおいては必ずしも簡単ではない」とお答えします。

<休養がうまくいかない例>

休養がうまくいかない例を見ていきますと、例えば上司から休むよう言われるも、仕事が気になり休めないという人。

また休養(休職)になったが、同僚に申し訳なくて結果休まらないという方。

あとはたえず未来のことが不安になって休まらないという方もいます。

<入院が必要な場合も>

これは人によっては入院が必要な場合もあります。

休職・薬の治療でも休養が難しい場合は、結果改善するのが難しいということがあります。人によりさらに悪化が続き、入院での休養を要するという方も中にはいます。

<休養ができない原因2つ>

この休養ができない原因、大きくは2つです。

1つ目は「うつ病の症状として休養できない」。

2つ目は「考え方などのくせがあって休養できない」。

<症状の時>

まず、うつ病の症状のとき。これはうつ病の症状で不安が出たり、考え過ぎてしまう「罪悪感」などが出ることがあります。

これらのためになかなか休めず、悪循環になることもあります。対策は休職したり、時に睡眠薬や抗不安薬なども使い「何とかして休養をとろうとしていき」ます。

ただ、なにぶん症状が重いときは、外来では難しいという人も中にはいらっしゃいます。

<考えのくせの時>

続いて、考え方のくせを3つ見ていきます。

①「自分を追い詰めてしまう」くせ

「完全主義」や「べき思考」等の考え方のくせから、なかなか休むことを自分で許せないことがあります。

対策は、そのくせに対して別の見方を探す「認知再構成」になります。

②つい考えてしまう

気になることがあると、そこからずっと考え事をしてしまうということが、人によって出ます。

この場合、「気になってしまう」はある種受動的なもので仕方ない。ただ、「考えるかどうか」に関しては選べる・介入できる余地がある。

介入法は、考えそうになったら「何か別のことに集中する」。すると、人は2つのことを同時にやるのは難しく、一旦考え事を切るということが時にできます。

③不安で考えて休めない

いろんなことを先読みして考えて不安になる。人によっては、「不安で考えるのはある種取り組んでいる。いいこと(だ)」というふうに、意識・無意識関わらず考える方もいます。

ここでは「不安で考える」ことの効果(マイナスが大半)を考え、今やるべきことに集中する事が大事です。

(2)しっかり休むこと(治療としての休養)

2つ目のテーマは、「しっかり休むこと(治療としての休養)」です。

ここのポイントは「改善をするためには、頭を休ませることに専念する」。

<休職の場合>

まず休職の前期・始めの時期(休養期)では何よりも休養に専念して考え事は最小に。

その後中期(リハビリ期)では、徐々に体を動かす一方「頭は休ませる」ことがやはり大事です。

そこを経た上で、最後・後期で初めて徐々に頭を使う練習をして、復帰に向けて慣らしていきます。

<仕事しながらの場合>

つづいて「仕事をしながらの時」、なかなか休養に専念は難しい中、仕事をしながらでも休日などで、しっかり頭を休ませる時間をつくるのが大事です。

そして可能なら、仕事の負荷を減らし、「無理をするダメージ」を減らします。

そして仕事が終わった後のリラックスから睡眠に至る、この流れを特に大事にしていただけたらと思います。

<補助薬:睡眠薬と抗不安薬>

このように取り組んでも困難な場合、補助薬を使う事があります。

まずは睡眠薬。深い睡眠は休養の非常に大事な要素ですが、症状や考えのくせなどで眠りにくい時がある。そのときは睡眠薬を使うことがあります。

ただ睡眠薬、依存の問題がある薬もあるので、改善した後は慎重に減薬を検討します。

続いては抗不安薬。不安が強いと頭が休まらなくてなかなか休養ができない「悪循環」になってしまいます。その場合には、抗不安薬の併用を検討します。

ただ、抗不安薬はどうしても依存の問題があるため、症状が改善した後は速やかな減薬を検討します。

(3)時間制限ある中での休養(仕事・再燃予防)

3つ目の話が「時間制限がある中での休養」いわゆる再燃予防・発症予防としての休養です。

ここでのポイントは、「いかに効率的に休むか」。

<仕事と休養、その対策>

休養の確保ということは当然再燃予防・発症予防にとって大事になってきます。

一方、仕事が忙しい時だと、そもそもの休養できる時間が限られてしまいますので、休養したんだけれども、休養の量が間に合わずに疲れがたまることが多いです。

こういう時どうするかなんですが、対策は「休養の効率を上げる」ということ。時間は限られているので、効率を上げて総量・疲れを取る総量を増やしていくということになります。

<具体的な方法>

具体的な方法を3つ見ていきたいと思います。

①休養を振り返って、休養の質を上げる

いろいろな休養の方法があります。寝るとかストレッチといろいろありますけれども、これまでの休養の方法を見ていきまして、「では、その効果はどうだったか」というのを振り返っていきます。

それを見ていくと、効果が上がった方法、上がってない方法というのがありますので、効果の上がる方法、それが相性のいい方法と思われますので、それを選んでやっていくというところ。

さらにはその方法・合う方法の中で、どうやったらより効率が上がるだろうかという、質が上がるだろうかというところをいろいろ工夫して熟練していく・質を上げていくということをしていただけたらと思います。

②仕事が終わってから寝るまでを改善する

どうしても仕事がある日、特に残業などがあった日に関しては、もう寝るまでできることは非常に限られています。かつその後「寝る」ということは非常に大事になってきます。睡眠の質も大事になってきます。

なので、仕事が終わってから寝るまで、お仕事が終わってから、いかにその後リラックスをしていかにいい睡眠にもつなげていくかということが大事になります。

そのためには、なかなか新しいことを取り入れるのは難しいので、仕事が終わってから寝るまでの間の「日常の活動」を活用していきながら、うまくリラックスできるように調整をしていく。順番を変えたり、いろいろ調整をしていくということをしていただけたらと思います。

③アクティブレスト

これは、体などを動かしたりしながらも頭を休ませる、動くんだけど頭を休ませるという方法になります。運動でそれをやるのは有名ですけど、趣味のほうでも可能かと思われます。

うまくいけばストレスの発散と頭の休養を兼ねるということで、非常に効率がいいということがあります。

特にこれは休みの日・休日などにそれを活用する余地があるんだと思います。その中でどの方法が合っているか、やはり個人差がありますので、色々試して自分に合う方法を探して見つけてもらえたらというふうに思います。

<まとめ>

今回は「うつ病の休養」ということでまとめてきました。

うつ病治療で休養というのは非常に大事ですけれども、症状や考えのくせというところで、うつ病での休養というのは時に行いにくいということがあります。ここには注意が必要です。

改善をするためには、しっかり休養に専念する・しっかり休むことが大事です。それがさっきの症状や(考え方の)くせなどで困難な場合は、抗不安薬などの薬の活用も選択肢になってくるかと思います。

一方、仕事をしていて、再燃予防などの時に関しては、「効率的に休む」というのが非常に大事になります。生活の工夫をしていったり、運動なども含めて色々合う方法というのを探していって、改善を図っていただけたらというふうに思います。

著者:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)